
韓国は働き方改革の一貫で今年から1週間の労働時間を週52時間以内に制限する改正法が施行されました。(記事はこちら)
今まで労働時間の上限が68時間だったのを52時間に引き下げました。違反すると罰金が課せられるそうです。
週に52時間というと9時に出社の場合、平均的に7時半前にはオフィスを出なければ法律に引っかかるという事です。(週5日出勤だと一日10.4時間以上働けない)
素晴らしいと思います韓国政府。早く帰る事で将来的には少子化対策になると見込んでいるそうです。
実は日本にも限度時間というのは存在します。労働基準法で週40時間以上の賃金間外・休日労働に対して,割増賃金を支払うことを義務付けられています。労働時間の延長の限度も週に15時間と決まっているので正当な理由がなく55時間以上働かせている会社は法律に違反しているんですよ〜!
限度時間以上働く場合は細かい要件を満たす必要があり,それなしで働かせている場合は法律違反、盗みとか人殺しと一緒ですよ〜!
インタビューシリーズ第3段、今回は韓国に在住しているイギリス人のゴードンさんにお願いしました。ゴードンさんは韓国に移住して8年。その前はドイツ、アメリカ、イギリスで仕事をして韓国の大手企業で働いていましたが、30代前半で人事アドバイザーとして起業。今は3歳半と11ヶ月の二人の娘さんを育てながら奮闘中。
私とゴードンさんとは以前働いていた海運会社の同期で入社で知り合いました。このインタビューでもう2人同期入社して起業したオーストラリア人、香港人ともお仕事で繋がっていると聞いてみんな頑張っているなと思いました。
“働き方を見直そう”インタビューの
シリーズ1弾はこちら→ 「フリーランスからIT企業の社長になった話」
シリーズ2弾はこちら→ 「勤め先から押し出され開業、流行りの治療院を営む夫婦の話」
1.RDI Worldwideとはどんな会社ですか?
人事のコンサル会社です。簡潔に言うと外資企業が韓国に支社を設置するのをお手伝いしています。メインの事業は2種類あります。
研修や講演、ディスカッションなどを通して企業の人材育成をする
韓国に在韓する外資系企業に合った人材を探す
RDI Worldwideは元々イギリスで1996年に設立して、私が韓国支社を立ち上げました。
外資系企業が韓国支社を設立するのはとても難しいです。エントリーバリアがものすごく高いのでほとんどの企業が韓国にすでに存在する会社を買収してジョイントベンチャーとして韓国市場に入り込みます、そうすると働いている人の99%がローカルの韓国人、以前の会社の風習や企業理念なども一夜で変わるものではありません。
私達はそういった風習、社内カルチャーなどを円滑にする為、社員全体が同じ目標に向かって仕事が出来るように研修や講演をしたり、また適材適所に合った人材を探すお手伝いをします。
2.どうして会社を立ち上げようと思ったんですか?
もともと何かのビジネスを立ち上げよう、という夢はあったんですが、何のビジネスを立ち上げるかはまだ決めていませんでした。
イギリスでは世界最大の海運会社、マースクで4年働いて、そこから韓国で2番目に大きな会社、HYUNDAIで4年働きました。大きな会社で働く、特に色々な国の人と働く際の人事がとても重要な働きがあって、韓国企業では改善できる点が沢山ある!と感じました。イギリス本社のRDI WORLDWIDEはうちの母が立ち上げた会社で、ファミリービジネスに関与するつもりは無かったんですが、この韓国支社を作れば良いんじゃないかと思い立って2年半前に起業しました。
韓国の根強い習慣や文化が良いと同時にグローバル企業に結合される妨げになってるんです。Hyundaiで働いているときにこの温度差にビジネスチャンスがあるのではないかと考えました。私はヨーロッパでもアメリカでも働いたし、韓国でも働いた経験から意識の違いの根本や問題点が分かっているのでそれを分かりやすく説明出来ますし、その企業にあった考え方が出来る人材を企業に紹介しています。
3. どうして企業は御社を選ぶと思いますか?
大きな理由は2つあると思います。
①海外の企業から仕事を依頼される場合、経験から欧米の方針が分かっているから。
②結果が付いてくるから
短期の結果→セミナーや研修で学んだ事をすぐに仕事に活かせる
長期の結果→人材を企業に紹介して、その人が結果を出せた
韓国の人事コンサルタントの会社って、2時間、授業形式の話をして最後に集合写真を撮ったら満足!という研修が多いのですが、私達の研修は参加型で、研修に来た人たちが自ら考え、意見を出し合ってアクションを起こすように仕向けるのです。そのビジネスの目的やビションを心から理解するようにトレーニングします。

それによって内面から社内向上が出来るようにやっていますので、最初の研修を終えてからリピートしていただいている企業がたくさんあります。
企業に頼まれて探した人材もそこで終わり!ではなくフォローアップするようにしています。実際にイギリスの会社の方ではフォローアップした際にまた違う企業がちょうどその方の能力が必要で同じ人を別の会社に転職させた、と言う事例もあります。ただの人材派遣では無く、パーソナルキャリアを一緒に構築する、パートナーのような会社になりたいと思ってます。
最初は私と研修を主に担当してくれる香港人の2人でしたが、現在は正社員4名、フリーランス3名の体制に増えました。マースクで同期入社したトラビスくんにはデジタルマーケティング、ウェブサイト担当してもらって、トレーシーさんはパーソナルコーチングとしてセミナーに参加してもらったり。小さいビジネス同士助け合えるようつながりを大事にしています。
4.経営者になって、従業員の時の働き方から変わったことはありますか?
自分の会社を経営すると言うのは天国と同時に地獄でもあります。
自分で全部コントロール出来る点は天国ですが、オン・オフがなくて常にオンである事はとても大変です。
従業員の時はどんなに忙しいプロジェクトに関わっていたとしても家に帰れば会社の事は外部事情とみなしオフに出来たのも、自分の会社だと四六時中頭の片隅にあるので、ほっと休める時間がありません。
新しいビジネスの開拓も困難です。韓国人はつながりを大切にする人たちなので誰も知らない状態でプレゼンしても全然仕事につながりません。ネットワークや知り合い、知り合いの知り合いから頂いた案件はすごいスピードで決定されますが、1から知らない企業をアプローチしても期待通りには進みません。
あと欧米人として判断が難しいのは「NO」と言わない文化。失礼だから言わないのは分かっているんですが、検討しておきます、って言われて返事を待っていたら全く検討する気がないと後々気が付いたりします。
最初のうちは顧客の開拓など、つながりを重視して全部自分のネットワークや、イベント、セミナーに参加しながら少しづつビジネスを開拓していきました。2年半立ってようやく知名度が上がってきて、最近では企業側から問い合わせがくるようになりました。
会社を運営するので実務の仕事以外に会計もやらなければなりません。先日会計士とミーティングがあって、我が社の接待費用が少なすぎるんじゃないかと怒られました(笑)韓国ではどの企業も接待が大事ですが欧米ではそれほど接待もありません。接待費用は節税対策だからもっと上げた方がいいんじゃないかとやんわり言われました。笑
僕たちは人を雇うスペシャリストとして会社を立ち上げましたが、自分の会社の人材を雇うのは(今更ですが・・)大変です。「良い!」と思って雇ったら直前にバックれたり、みんなが勧めるけどどうしても気にくわない点があって採用をやめたり。日々勉強になります。
5)若かりし頃の自分(20代)にアドバイスがあるとしたら何ですか?
この質問を見た時に、そんなにアドバイスって感じではないけど・・あえて言うとしたら初心忘れるべからずみたいな出来事が2つありました。
1)マースクで働いていた頃、MISEプログラムという社内育成プログラムを2年終えた時にさて、この後どうしようと考えた後、当時の社長Mc-Kinney Mollerさんに直筆で手紙を書いたんです。Mollerさんは父親から受け継いだ船会社を一代にして世界最大の船会社に築き上げ、98歳で亡くなるまでまだ週に1度は会社に顔を出していました。当時95歳だったモラー社長から直筆でこんな返事が返って来たそうです。
ゴードン君、ようこそマースクへ。僕は長年海運のビジネスに携わって来たけれども、君がこの先どうすればいいかのアドバスは到底出来ないよ。自分で経験することが一番大事だと思うよ。新しい事にどんどん挑戦していったらいいと思う。
2)それと似たような出来事で、アメリカのニューヨークで仕事をしていた時に1年キリだったので吸収できるものは吸収しよう!と仕事以外でも平日も週末も外出したり遊んだり観光したりとにかく時間に限りがあるので全部挑戦したい!と言う気持ちでした。翌年、自国のロンドンで仕事を始めた時にはそれと逆で、月曜日に飲みに誘われたら疲れるから、と断ったり、出かけようと言う誘いも遠いから嫌だと断ったり。
その時にワーホリで来ていたオーストラリア人が自分がニューヨークにいた時のように「今を生きる」感じで毎日新しいことに挑戦したり、出かけたり、すごく生き生きしてたんですね。もちろんルーティンがある事って大事ですけど、新しい事に挑戦するってそれ以上に大事だな、そう言う気持ちを忘れてはいけない、外に出て、新しい人に合う、そう言う姿勢はとても大事だなと思います。
6.韓国や日本の働き方、どのように改善したら良いと思いますか?
(過去は美化されるかもしれませんが・・)僕の最初の仕事がドイツだったんですがドイツは年間の労働時間が短いのに生産性がとても高い国なんです。*
*17年の年間平均労働時間は韓国が2024時間(週当たり38.9時間)と、37カ国中3位。反対に年間労働時間が最も短かったのはドイツの1356時間(週当たり26時間。)
例えば、仕事をしているときにグレーのエリアで残したがるアジア人の文化と違い、はっきり白・黒で話をするので決定事項が早いのです。アジアはつながりを大事にしますが、ドイツはもちろん友人や知人をひいきしますが聞く耳を持つ、と言うスタンスで吟味します。つながりも大事ですが、時間をロスする引き金になります。
韓国では採用基準がエリート思考なのでどこ大学の何学部や、以前の経歴を重視しすぎて本当に出来る人を雇っていないケースもあります。そう言う概念が少しづつ変わっていけたらドイツの様に生産性を上げていけるのかなと思います。
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インタビューは以上です!
ゴードンさんお時間ありがとうございました!
RDI Worldwideの詳しい情報はこちら
ウェブサイトには就職に関するヒントがもらえる記事(英版)や働き方にちなんだ記事などが沢山載っています。韓国に支店を出したい、韓国人を雇いたい、韓国で働きたい、色んな質問に答えてくれると思います。
さいごに
ゴードンさんのチャレンジする誠意、すごくいいなと思いました。新入社員で入社して何するか分からないから社長に直筆で手紙を出して聞いてみるってまず頭に浮かばない発想だな、と感動しました。韓国の大手企業の人事がどうにかならないのか、と悩んで文句を言うだけでは無くて、そんなサービスが無いなら自分で立ち上げてしまおう!というのもとても勇気があるなと思いました。
そして人事のスペシャリストでも自社の採用には頭を悩まされる、という意見にはすごく共感しました。私自身も最近雇った人が上手く行かなかった経験もあったりしました。人材は会社にとって一番の価値です。小企業には仕事が出来るだけでなく、その人と気があったり、会社の方針、どうしていきたいかの価値観も合わないとやって行けません。いい人材を見つけるのは本当に大変です。教育するのもとっても時間と知恵が必要です。
その上、文化や習慣の違いをグローバル企業が韓国でスムーズに運営できる様に助ける事、そんな所に上手く目を付けたゴードンさん。ビジネスチャンスって実はもう目の前にあるのに見えていないだけかもしれませんね。
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