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多言語とエンジニアのキャリアを活かして起業。航空業界コンサルタントにインタビュー。




インタビューシリーズも7人目!今回はフランスで航空業界のコンサルタントを行っているRelaerの社長さんにインタビューしました。


元々はエアバスで働いていたエルボライさん。仕事には満足していたけれども、業界のマネジメントスタイルが変わって来た2000年あたりに思い切って起業。その翌年の9月11日、アメリカ同時多発テロ事件で航空業界全体が不況に陥ります。


そんな中でも諦めず、今ではエアバス全体の12%のデリバリーを管理するまでに成長。

今回のインタビューは社長の仕事に対する姿勢や、仕事とは!会社を回すという事は!という経験から来るアドバイスにフォーカスして書いて見たいと思います。

1)Relaerとはどんな会社ですか?

Relaer (Reliance Aerospace Solutions )は航空業界の総合コンサルティング会社です。


会社にとって飛行機は大変高額な買い物です。航空会社に購入の手助け、アドバイス、デリバリーの進捗状況を確認・報告、手渡し前の最終インスペクションなどを手伝います。弊社はエアバスの工場のあるフランスのトゥールーズとドイツのハンブルグに構えており、何か問題があればすぐ工場に駆けつけられます。


飛行機は新規で注文する場合、座席や外観のペイントなどをオーダーメイドすることが出来ます。その工程が予定通りに進んでいるかどうかや、指定した色や形に仕上がっているか確認して問題が生じたらすぐに対応出来ます。


以前、進捗状況の報告をする為視察に行った時に、工場のロボットが故障していて同じ部品の同じ工程を繰り返し行なっていて部品が曲がってしまったというアクシデントもありました。


工場で働く人たちはみなさん現地の人なので、買い手側との意思疎通が出来るよう、私自身が多言語で接客出来ます。ドイツ語、フランス語、英語、それからアラビア語が話せるので意思疎通がスムーズです。

white airplane

Photo by Soumya Ranjan on Pexels.com


出来上がった機体はインスペクションをします。車検と同じで通れば証明書が出ますのでその時点で機体の手渡しとなります。注文から引取りまで総合でサポートしています。


機体の新規購入、中古の購入の仲介をしたり、銀行に融資のアドバイス、リースの管理(使用していない機体を短期や長期で貸すこと)、契約書の手助けなど、とにかく飛行機の製造から運行に関わる全ての工程にお手伝い出来るようにしています。

2) どうして起業しようと思ったのですか?

元々トゥールーズのエアバス社で働いていましたが、2000年手前あたりから社内の大黒柱だったマネージャー、大御所というんでしょうか・・皆さん定年される年齢になって、その後見者の若いマネージャー達の仕事に対する姿勢がなんとも気に入らなかったから・・ですかね。


飛行機に対する情熱も、現場の知識も薄く、金儲け、コストカットにしか目が無くて、現場との温度差がどんどん大きくなって来ました。あるマネジャーに「前職は何ですか?」と聞いたら「乳製品の業界で働いていました」と言われた時には驚きました。


例えば、エンジニアのデザインした安全基準合格する為にかかる費用を削減しろ、と頭ごなしに言われて、安全性の無い機体は売れませんよ、一番大事な事なんですからと説明しても聞く耳を持たなかったり。


実際に運行する航空会社やその乗客に目を向けず、自分の営業成績だけを見つめているので救いようが無いな、と思うと同時に、”救いようが無いから買うお客側に付いてどういったポイントを確認すればいいか、どういうアドバイスをすればいいかな、と自分の経験を活かしてコンサルタントとして起業すればいいのでは無いか!”と気づきました。


3)どうしてお客さんは御社のサービスを選ぶと思いますか?

第一の強みは返信の速さです。大企業のコンサル会社にはブランド力がありますが、問題が起きた時に社内のマネージャーや決定権のある人に話が伝わるまでが長いという問題点があります。逆に私たちは小さな会社なので返信、決定事項が早い、柔軟であるという利点があります。


第2の強みは他の国の文化やしきたりを理解している点。私は色々な国で育ちましたので(ドイツ、イギリス、スイス、レバノン、フランス、エジプト)他国の文化に詳しい、という利点もあります。例えばお客から「相手側から1週間連絡がこない!」と怒りの電話をもらった時も、フランスは今クリスマス休暇で休みです、とかエジプトはラマダーンの月に入りましたので仕事の時間が短くなります、など現地の人にしてみれば当たり前の事ですが他の国に住んでいると見えないものが沢山あります。


第3の強みは経験力です。コンサル会社の社員はMBA取得の若者!というイメージがありますが、私の会社で働く社員のほとんどが航空業界の出身のベテランです。経験がものをいう、経験がなければ分からない問題も多いです。難しい問題をシンプルに砕いて提供する、それが我が社のモットーです。


最後の強みは、お金より関係を大事にしているところです。


最初に起業した時には昔一緒に働いたお客さんがまず連絡をくれました。


「今トゥールーズとハンブルグでインスペクションをお願いしている会社をやめて君に是非お願いしたいと思うのだが」と話を持ちかけられました。


まず最初に聞いた事は「トゥールーズとハンブルグで今仕事を請け負っている会社には満足しているのか?」と。


「ハンブルグの方は満足しているよ、よく働くし返事も早い。」


それを聞いて私は「せっかくの話だけれど断らせてもらうよ、サービスに満足しているなら横取りする必要は無い。仕事を確保しても敵を増やしてしまうなら私は断る」と。


そのお客さんはびっくりしていました。「本当か?でもトゥールーズの奴には参っているんだ、サービスは悪いし、対応も悪い。」


私は「その仕事だったら喜んで請け負うよ。」と返事をしました。


航空業界も狭い業界で運営する側は強いつながりを持っています。起業して仕事と引き換えに敵を作ってしまったら次の仕事に繋がりません。私のサービスを使い買い手も売り手も満足出来る、Win-Winの状態を提供できて始めて成功と言えます。


締め切りに関しても正直に伝えます。できない仕事は請け負わない、問題があれば隠そうとせず向き合って解決する。そういう姿勢でいると自然とお客に信頼されて広がっていくと思っています。


現在の目標は、Relaerのブランド力を上げること。最初は小さなチームでしたし、私の名前を知っていて連絡してくるお客さんが多かったのですが、もう60を過ぎたので徐々に私が居なくてもチームが回るように少しづつ若い社員に仕事を任せて居ます。

4)経営者と社員の違いは?
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エルボライさん


経営者も社員もどちらも大変ですが、大変さが違うと思います。


社員は、大企業であれば安心・安定がありますが、社内政治に気を配ったり、良い!と思ったアイディアも周りの同感が無ければ潰されてしまいます。クリエイティブ・自由に仕事をする、という特権が取られてしまいます。


例えば私が中間管理職だった時の仕事は3割りが部下のケア、6割がミーティングや社内政治で時間が取られてしまって自分の仕事をする時間が1割くらいしかありませんでした。

経営者になってからは、もう朝起きてから夜寝るまで獲物を捕らえにいくハント(狩り)モード。今日仕事があるかもしれないし、無いかもしれない、という全くの不安定な中での仕事になります。


仕事に対するモチベーションは、とにかく生き残りたい!サバイバルモードですね。自分の会社、家族だけではなく、働いてくれている社員、社員の家族にも責任を感じます。


こういったプレッシャーを「ポジティブなストレス」良いものだと捉えています。


社長として何が一番大事か、と考えた時に社員のモデルにならなければと思っています。


数珠を社員に例えると、数珠を後ろから押そうとしてもまっすぐに前に進めるのは難しいです。でも前から引っ張ると後ろは簡単に付いてきます。自分が見本となって後ろが付いてくる、そんなリーダーになりたいと常に思っています。


毎朝、会社には6時半には着いているようにして、夜も皆が帰るまでいるようにします。質問があればすぐ対応できるように、社員が終わらない仕事もサポート出来るようにしています。


それでも社員が仕事をきちんとしない場合には態度や仕事の見直しをする場を設けます。話し合って改善した場合もありますが、改善しなければ手紙で告知をして辞めてもらった社員も居ます。


経営者として社員に優しくするのは当然ですが、恩を仇で返されたら負けです。社員のモラルや態度をコントロールするのも経営者の仕事だと考えて居ます。

5)今までで一番役に立ったアドバイスは?

アドバイスというか生き方のレッスンとして父を上げたいと思います。


私の父は誰とでもフレンドリーに話が出来る人でした。父が他界した時、実家の電話と玄関のベルが同時になった事がありました。


電話にはある国の次期国王から、「君の父は私にとって家族の様な存在だった」と悔やみの言葉を頂き、ドアベルにはアパートのドアマン(ドアを開け閉めする係)の男性が立って居ました。彼は泣きながら「君のお父さんは僕にとって家族の様な存在だった」と悔やみの言葉を頂きました。


その時に、私は父の様に、ドアマンから国王まで、どんな身分の人でも平等に接せる人になりたい、と強く感じました。今でもその言葉どおり、社員もお客さんも家族も社員の家族も誰かを特別扱いする事なく皆平等に接しています。


そして商売はいつもwin-winではありません、負けることもありますが面目を潰されなければいいんだと考えています。武士道にちなんで相手がフルフォースであってから始めて戦う意味があると思っています。弱っているところで戦ってもフェアではないからです。

6)日本やアジアの仕事に対する姿勢をどう思いますか?

私自身、日本の会社と長年仕事をしましたが、団塊の世代と今の世代は目指している価値が変わってきたのかなという印象があります。以前は購買力、資本主義、物を買う!という事が重点にありましたが若い人にはそれほど成功したい、お金があればあるほど良い、という時代は終わったのかな?という気がします。


他のアジア諸国の勢いが・・というニュースがよくありますが私がよく思うのが1人の人が持つ20年の経験は、1年経験のある20人が集まっても敵いません。


航空業界の技術はまだ欧米がトップクラスです。仕事でアジア圏新興国の航空会社のコンサルもしましたが、みなさん熱心に話は聞いてくれるのですがやはり経験が浅いため全体像が見れません。「ちゃんと話を聞けば、同じ部署のxxよりも多くボーナスがもらえる」といった感じで視野がものすごく狭いんです。


目に見える部分(外観、デザイン)の話はすんなりと理解できても、構造や土台の部分の話になると経験が少ないためにきちんと理解出来ていません。自分の与えられた仕事をきっちりこなして隣の同僚と競争する為に生きるんでは無くて、もう少し将来を見据えた働き方、全体像を捉えて何が必要かを考える思考が必要なんじゃないかなと思います。

7)仕事以外の余暇、休日の過ごし方を教えてください。

スキューバダイビングと写真が趣味です。


週の間は仕事で忙しいので週末は家族と過ごす時間が多いです。週中ずーっと出張で留守にしていた人が週末にも1人で趣味を楽しむのは自分勝手です。


私は仕事も家庭もバランスが大事だと思います。私にとって家族で過ごす時間が一番リラックス出来る時間です。


会社で上司の機嫌を伺いながら、アプルーバルを求めている人、認めてもらいたい!と思っている人は家庭でも認めてもらっていない証拠です。


仕事で成功する、認めてもらう為にはまず自分に一番近い家族に認めてもらう必要があります。家でゆっくり出来て、しっかり充電できれば仕事でも実力が発揮できると思います。

周りの人がこの態度を良いか悪いかという意見には興味がありません。家族にさえ好かれていれば良いと思っています。


最近はインターネットなどで常に外と繋がっている状態です。本当に休みたいのなら携帯電話も完全にオフにして半日、一日過ごす必要があると思います。いくら自分の会社でも四時間メールをチェックしなかったら破産する訳ではありません。


あとは一つの事に集中する事。たくさん仕事を終わらせようとしてミーティング中にメールの返信をしているようだったらどちらも中途半端になって結局多く時間がかかってしまいます。ミーティングならミーティングに集中して、メールならメールに集中、週末は完全にオフモードで家族と過ごす。一つの事だけに集中する事が大事だと思います。

 

インタビューは以上になります!

エルボライさんありがとうございました。

会社の詳しい情報、Relaerのウェブサイトはこちら

さいごに

2001年に起業して17年経営者を経験していると、参考に出来る事が沢山出てくるなーと感じました。最近新人君を雇ったが結局うまく行かなかったという話をしたところ、人を雇うのは何年立っても一番むずかしい仕事だから気にする事ないよ、と言ってくれました。


近年信頼していたパートナーと意見が合わなくなり、最終的にやめてしまったという話も伺いました。最初は上手く行っていても長年仕事をするとかみ合わなくなる事もあるんだな、と実感しました。


コンサル業界の裏話も沢山してくれました。私の同期もMBAを取得した後に新卒でコンサル会社に就職しました。長年の経験を活かしてその業界の手助けをするのが本来のコンサルティング業なのに、今はチェーン店の様に問題提起の枠にどの業界もはめて、コスト削減案や利益増案を出しています。


新卒で3年働いた友達が最近辞めた理由が、「現場を見て、問題を探すというよりはパワーポイントが上達したよね。プレゼンさえ上手になればお客も上司も満足してくれるし。やり甲斐が感じられなかった」と言ってました。


エルボライさんのように現場の仕事も理解しつつ、買い手のメリットになるように交渉する、それこそがサービス提供であるし、それだからこそ不況の中でも成長した企業なんだな、と感じました。


あと、すごく参考になったのは家族を大事にする点。家庭で認めて貰えない人は仕事でも認めて貰えないだろう。そして家族でいる時間が充電時間、リラックスできる時間だ、というのがなんて素敵な余暇の時間だろう、と思いました。


私はまだ娘が小さいので週末が長いな、早く幼稚園始まらないかななんて月曜日を楽しみにしてしまってる事もあります。でも夫と3人で映画を見たり、公園にピクニックに行ったり、大変な合間に「あぁ、幸せだな。家族がいて」とほっこりする事も多いです。


周りの目を気にする事なく、家族の目だけ気にすればいい。すごく簡単な事ですがやっぱり周りの目が気になってしまいますよね。邪念に惑わされず本当に必要な事、大事な人に目を向けて仕事も私生活を送る。参考になります!


過去のインタビュー記事も合わせて読んで見て下さい!


第1弾はこちら→ 「フリーランスからIT企業の社長になった話

第2弾はこちら→ 「勤め先から押し出され開業、流行りの治療院を営む夫婦の話

第3弾はこちら→ 「イギリスから韓国に移住、会社を立ち上げて奮闘中!

第4弾はこちら→ 「社長が急に亡くなり28歳で会社を引き継ぐ事になった女社長

第5弾はこちら→ 「日本初のナポリ料理の出店をこぎつけた女社長の話」

第6弾はこちら→ 「ソーシャルワーカーから一転、期待の小説家へ!

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